コミケ告知

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2018年12月10日月曜日

職場に一切不満がないのに辞めた

今年は退職者 Advent Calendar 2018 への参加権利がある!
10日目の記事になります。

前職


 ちゃんとした裁量労働で、働き方には自由があるところでした。新卒で入った会社で見た「裁量労働だけど朝8:15に来てないと評価ダウン」みたいな、残業カット目的のみの裁量労働ではありませんでした。始業時間の10~20分後くらいに毎日出社して、空いている電車・空いているエレベーターを使っていました。もちろん極端な勤務時間のときは事前申告していましたが、たまに夕方出社することもありました。平日勉強会参加のために早く上がるのは、容易でした。
 業務内容は、ネットワークの研究職っぽく新しめの技術調査・検証をしつつ、時々開発も手伝いに行くという感じ。業務遂行者としても、技術者としても、理想的に成長していたと思います。開発に参加したサービス・製品はとても気に入っていたし、所属を明かさないままTwitterで評判を見ていて、とても楽しかったです。会社としても、業界内の争いで善戦していて、快進撃する理想の企業ではなくとも、十分やれている感じでした。理想の職場で、毎日楽しく出社していました。
 個人の技術面では、技術調査・読書・実際動かしての検証などにかなり時間を使えました。C言語ちょっと書ける程度だったものが、Java/C++/Scala/PHPなど実戦経験を積み、ちょっと触った程度の言語は多数、そしてTCP/UDPとJVMについて、以前よりはだいぶ詳しくなりました。ついでに、ネットワーク周りの技術情報でまともなものは大半英語なので、副作用としてTOEICは800点台後半になりました。

 それで何が問題だったかというと… 昇格ルートが詰まっていたのです。職位の微妙に高い人達がやたら多く、その下から全く上がれなくなっていました。給料がぐいっと伸びる箇所が30代にあるはずが、見込めない。給料もそうですが、職位に紐づいた権限や信用度が得られないことがむしろ問題で、実際火消しの時には根幹の議論に参加するのに、設計に参画するには格が足りない。
 人口ピラミッドの構築ミス、すなわち上位に人が多すぎるので上げるわけにいかない状況、使えないのに高給な人間により詰まった状況。似たような話、他社の同世代友人からも複数耳にしています。これが発生してしまった組織ではもう、修正は不可能なのではないかと思います。評価体系か採用の失敗です。前述のような楽しい環境を離れるのはとても苦しい決断でしたが、最終的には退職しました。職場ではなく会社に、修正不可能な部分がありました。


現職


 改めて現時点の実績で評価し直された結果、給料は上がりました。転職のオーバーヘッド(賞与評価損・試用期間等)は100万円近くなりそうですが、それを踏まえての今年を見てもそこそこ上がっていました。フルに貰える2年目は結構期待できそうです。
 そのかわり、裁量労働を失いました。朝一番混む時間の電車、ビルのエレベーター大行列、今まで馬鹿にしてきたものに参加しているのは屈辱です。遅刻は罰金、かつボーナス減額に繋がるので大変です。もし子供が居たら、パートナーと実家に全部押し付けられる人以外は、収入3割くらい削れると思います。噂では聞いていたけど本当にあるとは思わなかった…。朝の恐怖感で夜には何もできなくなり、2018年、趣味のコーディングも知識補完もさっぱり行われていません。このブログも、今年のAdvent Calendarの前が前年のAdvent Calendarという体たらく。技術系同人誌の執筆量も1/3くらいになってしまいました。全てお金と引き換えになったのだ。人生は難しい。これ大丈夫かな、長期的に見てエンジニアの死じゃないかな、という不安がちょっとあります。
 業務上の秘密を公開することはいけないけれども、労働環境周りはもっと情報をオープンに出来る世界であってほしいです。今居る会社のことを検索してみても、現実に近い話は全然引っかかりません。もしかすると消してるんでしょうか。
 文化の違うところに来たのは間違いなく良い経験です。しかし、あまり長くはもたない予感があります。転職するのであれば、明確な実績をひとつ残すまで頑張るか、在籍期間を損切りして次へ進むか、あるいは考える余地なく耐えられずに脱落するか。来年も、このアドベントカレンダーに参加しているかもしれませんね。

まとめ

  • 昇格詰まりは転職以外で解消できないと思う
  • 厳格な労働時間縛りは、予想以上に失うものが大きかった
  • 労働条件の共有は進んで欲しい
2018年12月6日木曜日

いま技術同人誌を書く・入手する意味とは…

 技術同人誌 Advent Calendar 2018 6日目の記事です。

 うちのサークル 浜風もっこす は、技術系同人誌を書いたり、ゲームの攻略本を書いたりしながら、いつのまにか年末で11年が経過するようです。技術系同人誌は、元々コミケの「同人ソフト」か「評論・情報」あたりでひっそりと生きていましたが、Twitterの隆盛により、コミケにそういうものがあるという存在の認知がされるようになり、さらには技術書典の登場により一気に熱が上がりました。時代は変わった…

 技術系同人誌、ニッチ・アングラな技術もまだ健在ですが、全体的には広く使われるソフトウェアの技術を扱う本が増えてきました。それらは、「ここでしか手に入らない情報」ではなく「ネットで調べれば見つかるであろう情報」を扱う本になるわけです。これって価値があるんでしょうか?
 ひとつには、技術系同人誌が優れているというよりは、情報源としてのインターネットが理想とは遠い状態にあるがゆえに、技術情報の出力先・入力元としての同人誌の、相対的な価値が高くなっていると思います。

 インターネット上の情報は、昨今さまざまな分野で言われているように、知らないことについて調べるのが非常に困難です。検索エンジンは、正しい情報ではなく、検索エンジンの提示したルールに従った(SEO力の高い)Webサイトを表示しようとします。上位に提示される大量のゴミを選別しないと、正しい情報に辿り着けないために、「知っている人は調べられる、知らない人は調べられない」となります。学習系の有料サービスが育っていくかな、と期待していたら、先日とんでもない内容でSEO力の高いプログラミング講座が炎上していましたね。わからない人には判別つかない問題、根深いです。

 一方で技術系同人誌、今のところは、儲かるからやるというよりは、情報発信に意欲的な人たちが主に執筆していて、打率が高い状況にあります。商業書籍に比べると「執筆者にアクセスしやすい」「即売会で直接話すことで執筆者の力量を測りやすい」「商業で採算の取れない技術分野のものが多く存在する」などのアドバンテージもあります。
 未来永劫、技術系同人誌および即売会の重要度が高いとは思いません。とんでもない内容の技術系同人誌を掴む可能性は、もちろん常にあります。いずれは当たり外れを見分けることの重要性が増して、インターネット上の情報と同じような問題を抱えることになると思います。ただ2019年一杯くらいは、まあ打率高い状態がキープされるんじゃないかな、そうなって欲しいな、という気持ちです。

(おまけ)
うちの本、今書店に唯一出ているのが、Network Maniacs TCP受信 基本編 です。
 Network Maniacs TCP受信 基本編
紙の本は COMIC ZIN さんにあります。PDF版は BOOTH にあります。よろしくお願いします!
冬コミにも出展予定なので、年末お暇なかたはぜひ。